画像は公式HPより
本来は懇談会があった昨日。
これもまた中止になりまして、予定がぽっかり空きました。
お引き受けしていた原稿もすべて手離れしている状態だし…これは今日しかないんじゃない!?
ということで足を運んだのは、東京都美術館で開催中の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」!
昨年果たされなかった約束を、今年こそ。
唐突ですが――コロナ、長いですよね。
去年やりたいことの一つに、「毎月美術館で気になる展示を見る」というのを挙げていたんです。
けれど、1月に行こうと思っていた展示が緊急事態宣言(だったかな???)を受けて会期短縮で唐突に年内終了し、2月に狙っていたものは感染リスクを考えて移動を自重したっけ……。
そう。
つまり、withコロナの「やりたい」は、「隙をみてやっておくセンスが問われる」と思うのです。

実際、昨日見に行ったこの展示も、本来は1月からスタートする予定だったものが、2月10日~に会期変更されていました。

そう考えると、
先延ばしをやめて即断即行動するいい練習になる、ともいえるのかも!?
目玉は「300年超の時を経て姿を現した天使」
最初に言っておきますが、私、アートには精通しておりません。
絵の見方も、よくわからん。
フェルメールも名前は知っているけれど、特別に思い入れがあるわけでもないし、時代背景とか作風とかも全然理解していません。
が、今回の見どころにロマンを感じてしまったんですよね。
それは、「何者かが消した背景が、350年の時を経て修復された」というストーリー。

メインに描かれた「手紙を読む女」は、背景はシンプルな壁として知られていたのですが、実はその下には「キューピッドの絵」が描かれていて、上塗りされていることは約40年前にX線などの技術で分かっていたのだそう。
でも、作者本人がそうしたなら、今の姿がこの作品だし、ってことでそっとされていたのでしょうね。
それが粋ってものですよ。
「私たち、そこにいるの知ってるのよ!技術があるから天使、見ちゃいましょうよ!!」ってのは、もはや噂話しているお節介おばさんと何ら変わりはない。
――ところがね。なんと、これ、他の人が塗りつぶしていたことがここ数年で判明したっていうんです。
作業をしていた修復師が、「あれ?こことここ、薬剤の反応が違うぞ?」と気づいたって言うんですね。すごい話。
そんなわけで、さらに分析を進めてみると、
- キューピッドの層と、そこに上塗りされていた層の間に、大層な埃の層があること
- 保存のために塗られたニスを剝がしてみたところ、それまで違和感なく見えていた上塗りされていた絵の具の色が、実は一定の経年変化した周囲のニスの色に合わせて調合されていた。もしフェルメール本人が上塗りしたのだと仮定した場合、フェルメール本人の没年などを考えると「生前にこんなにニスが変色しているはずがない」=つまり死後に何者かが作業したと考えないと説明できないこと
などが判明するわけです。もうコナンの世界。

そんな「見た目は修復師、頭脳は捜査官」な方々の尽力によって、綿棒や顕微鏡でコツコツコツコツ作業が進められて、昨年9月に所蔵しているオランダの美術館でようやく本来フェルメールが表現していた姿がお披露目されたというわけです。



フェルメール…よかったねぇ…!
350年ぶりに姿を現したキューピッド。息苦しかったでしょうねぇ。
「よしよし」とでも頭を撫でてやりたい気分ですが……この姿が「いや、そんなの結構です」と言わんばかりの勇ましさですよ。足で仮面を踏みつけています。
研究者曰く、この姿は「真実の愛は嘘や偽善に打ち勝つ」というのを表現しているらしいです。つまり、女性が読んでいるのは恋文で、画中画によってそれが裏付けられるということですね。
犯人(?)の完全犯罪が何世紀もの時を経て暴かれ、出てきたのは「嘘や偽善には負けないぞ!」っていうキューピッドだった、って……出来過ぎた話じゃありません?
ちなみにこのキューピッド、いまやツイッターの公式アカウントまで持ってますよ。
なんなら、同じ上野公園内の別の展示にまで遊びに行ったりしちゃって……
まさか、こんな日が来るとはねぇ…
音声ガイドの功罪
ちなみにこの展示、タイトルにもあるように「17世紀のオランダ絵画」も同時に展示しているのですが…正直、私は飽きてしま…(以下略)。
いや、素晴らしいんですよ!心惹かれて、まじまじと見つめる絵もありました!
けれど――量に負けた。

実は私、今回珍しく、「音声ガイド」を借りたんです。

ちなみに1台600円
でね、お金払ったらコスパを意識するじゃないですか。心惹かれない絵の前に「ガイドのボタン押してね」マークがあれば、押したくなるのが人情ですよね…。さっとスルーしようかな、と思う絵にも、足止め。解説が終わらなくて、さらに足止め。

もちろん理解は深まりますよ!
さらに音声ガイドに振り回されている自分を認めるのも癪だから、(実はろくに心惹かれてないけれど)その両隣の絵もじっくり見てみようとする→興味がないから飽きる、という、ね…。

途中から興味があるのだけ聴くスタイルにシフトしました(笑)

美術のことよくわからないから、音声ガイドで興味をくすぐられてみよう!と思いましたが、むしろわからないならわからないなりに、純粋に気になる絵に時間をかけて眺めてみたらよかったかも。
ちょっと理解のある人が聞くと化学変化を起こすのが音声ガイドなのかも…なーんて。
あ!でも、一つすごく良かったのは、「窓辺で手紙を読む女」にどんな歴史があったのか、というのが知れたこと。
いまだにこの上塗り犯が誰なのか?目的は??などははっきり判明していないようですが、音声ガイドによると、「某修復師」が「レンブラントの絵」っぽく見せるためにそうしたのでは?というのが有力、という説も…???
詳しくはぜひ会場と音声ガイドで(←結局勧めるという矛盾(笑))。
お金と権力に目がくらむ腹黒さや人間臭さが、プンプン漂ってきますよ…ふふふ。
おしまいに
さらに最後に一つ言わせてほしい(!)のが、「見せ方が素晴らしかった」件。

会場は進路に沿って大きく7エリアに分かれていますが、各エリアのプロローグとしての解説をしたためたフレームが上部がアーチを描いた窓型でかわいかったんです。メイン展示が「窓辺で手紙を読む女」だからかしら…と思っていたのですが、あとでリーフレットを改めて見たら、所蔵館である「ドレスデン国立古典絵画館」の窓の形を模しているのかも!!!と気づきました。
く~…にくい演出!

さらに、エリアごとの区分けは、壁の色をガラリと変えることで印象を大きく変えている。ちょっとくすんだこの壁の色一つ一つも、またセンスが溢れて素敵。オランダの文化にも明るくない私ですが、唯一知っているオランダ生まれと言えばミッフィー。そしてその絵本の背景は、多くが単色で塗られていることはよく知られていますよね。今回の壁の単色カラーリングも、オランダ的アイコンを意味しているのかしら…なんて思いも馳せつつ。
キュレーターのお仕事っぷりにキュンキュンした展示でした!

会期は4/3(日)まで。
私はタイトなスケジュールに追われていたので朝イチの時間枠でチケットを取りましたが、入館前は行列!会場を後にした11時ごろには、すんなり入館できそうだったので、時間にゆとりがある方はむしろこれくらいの時間の方がゆったり見られるかもしれません!