アート初心者の美術館巡り② ~ウィーン生まれのカワイイがすごかった!~

休み時間

今年やりたいことの一つとしている「アート鑑賞」。
2022の美術館第2弾は、丸の内の「三菱一号館美術館」で開催中の「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」です。

ウィーン生まれのカワイイ

わたしはリチさんのことは全く存じ上げなかったのですが――フライヤーに印刷された絵柄を見るだけで心はわしづかみ!!!「絶対行く!!」と決めていた展示の一つです。

上野リチはウィーン生まれのデザイナー。
後に日本人建築家と結婚したのを機に京都に居を移します。

ウィーン工芸学校でデザインを学んだ後、テキスタイルや小物など、様々なデザインをウィーン工房で手掛け、結婚後はそれと並行して夫の設計した建物の内装をリチが手掛けるなど…その活躍がものすごいこと!

そして何より、そのデザイン性の高さと垢抜け感といったら、もう!!!

リチ、19世紀末を生きているんですよ。
つまり、戦前~戦後のデザインたち。
なのに、古さが全くないどころか、今手にしたいデザインばかり……!

会場内には、リチが働いていた「ウィーン工房」の他のデザイナーの作品も展示されていたのですが…デザイナー名を意識せずとも、パッと目にしたときに思わずじ~っと見入ってしまうのは、どういうわけかリチの作品ばかり。←

いや、見てもらうとわかると思う。魅力が圧倒的!

他のデザイナーさん、ご、ご、ごめんなさい…

これ、スキーの手袋のデザインです。たまらない…!!!

何に心惹かれるのか、ひとりで「う~ん…」と一生懸命考えながら鑑賞していたのですが…デザインが大胆かつ正直で、色彩が朗らか、なのかな。
「無難に」「うまく」まとめようという意識ではなく、デザインそのものを愛して楽しみ、畏れない姿勢。デザイン画を見て勇気をもらうだなんて思っていなかったけれど、「きゃ~♡かわいい~♡♡♡」で終わらなかったことに、我ながらびっくりしました。

「ファンタジー」を侮るなかれ

で、この「びっくり」は何から来たんだろう、と考えたのですが…それは「ファンタジー」という言葉に秘密がありそう…!

ファンタジーって聞くと、どんなイメージですかね?
お花畑にちょうちょが飛んで、ほわわわ~ん♡みたいな感じじゃありません??

…ところが、リチのいう「ファンタジー」は全く違うもの。
晩年教育にも従事したリチの「ファンタジー」とは、こういうものだったのだそう。

模倣を厳しく戒め、新しい表現を求めて、たとえ拙くとも自らの創造性を羽ばたかせる

――展示冒頭の解説に書かれていた文章ですが……「ほわわ~ん」どころか、むしろストイック!
上手いか下手かではなく、自分だけの発想を形にすることがファンタジー。

どこか甘~い空気を想像していたけれど、そこから少し距離を置いた凛とした清々しさはこのあたりから来ていたみたい。

時代に、空気に、忖度しない目

そしてもう一つ感動したのが、リチを正しく評価した周囲と、日本に渡ってもちゃんとリチらしさを失わなかった本人の「忖度」のなさ。

何度も言いますが、リチは時代の先をいっている印象。だって、本当に今も身につけたくなる、手にしたくなる「かわいい」を、半世紀以上前から生み出していたわけですよ。
…周りの人が、よくこのかわいさや先取り感を評価できたな、って。リチらしさをつぶさずに、むしろどんどん伸ばして生かしていく。

日本に渡ってからも、京都のお役所やレストラン、個人宅に、リチの壁紙や絵が施されていって。「外国人」であるだけで迫害されそうな時代に、むしろ仕事を依頼される。
実力があったと言えばそれまでだけど、それでも彼女を活かしきる環境があってこそなはず。この周りの審美眼にも拍手を送りたい。

そしてそれに応えるリチも。ちゃんと日本文化を理解し、融合しながらも、リチならではの「かわいい」が散りばめられているんです。日本らしさに全く違う角度から光を当ててくれているようで…展示の中盤に登場する屏風は、わたし的にぜひご覧いただきたい作品の一つです!

キュレーションの難しさ

さて、ここから少し話は変わって・・・「三菱一号館美術館」について、個人的に思ったことを。

タイトルにもある通り、私はなにせ「アート初心者」なので、美術館のことはよくわかりません。
そのうえでフラットに感じたこととしては…展示が…部分的にちょっぴり見にくかったんですよね。

建物自体が1894年に建設された「三菱一号館」を復元したものとのことで、そもそも美術館を用途として設計されていなかったのかな?詳しいことはわかりませんが…あっちを見て、こっちを見て、みたいに、ストーリーに没頭できない感が少々。

逆に、「どうして順路通りに進まなきゃいけないのよ」くらいに思っていたこれまでの展示のあれこれは、私たちを自然にストーリーに乗せてくれていたんだ!と今さら理解できてしまった…
キュレーターさん、ありがたや~(涙)

あと、一部作品の詳細な解説については、スマホで見ることができるんです。
これはSDGs的観点ではとても素晴らしいのですが…展示室内でスマホ片手に操作しなきゃいけないので、没入感が削がれてしまう感はありました。

おしまいに

何はともあれ、本当に心躍る作品が並ぶ今回の展示。
会期は5月15日までなので、ぜひとも足を運んでいただきたいところ。

ちなみに、三菱一号館美術館は年間で3つの展示を行っているのですが、6月からはシャネル展…。さらに10月からは先日の投稿で紹介した本の中で「結婚に失敗した男」として紹介されていたヴァロットン展…。

あぁ、どれもいかずにはいられない!
・・・目標にしていた年に6つの展示、あっという間にクリアできてしまいそうです。

■自由なアートの楽しみ方を知りたい方に(個人的推しの一冊)

当初図書館で借りていましたが、予告通り、買いました!

タイトルとURLをコピーしました